hasu-footballのブログ

サッカー関連の記事多め。何かしら得ることのある内容にするつもりです。

ゼムノビッチの講演会

僕が中学生の頃、とあるイベントにゼムノビッチがやって来た。

「いやいやゼムノビッチって誰やねんw」と思った人もいるかもしれない。特に若い人には全く心当たりがないだろう。

彼は、清水エスパルスを強豪に育て上げたり、日本代表やJリーグに提言をしたり、今でも日本の下部リーグを指導していたりする、知る人ぞ知る名監督なのだ。(それとハリウッド俳優のリーアム・ニーソンに似ているので興味があったらググってみて)

 

とまあ、今だからこそ知っている訳だが、当時は僕は「いやいやゼムノビッチって誰やねんw」と思ったものだ。が、「元清水の監督らしいし外国人だし、なんか面白そうだな」と、軽い気持ちで講演会に参加した。

 

さて、講演会が始まった。驚いたことに、通訳がいなかった。遅刻かな? 通訳来るまで寝てようかな? とか考えていたら、片言の日本語が聞こえてきた。そう。彼は日本語を話せたのだ。(ちなみに彼が日本語を話せることは、サッカー通の間では有名だそう)

 

加えて、参加者全員がサッカー経験者だったためか、講演会の内容は当初予定していたよりも深いものになっていった。当時のエスパルスの戦術を、プロジェクターで映し出した映像を使って詳しく解説してくれたのをよく覚えている。当時の僕はサッカーにさほど詳しくなかったが、それでも「わかりやすいな」と感じた。

 

日本語で丁寧に、戦術、監督の心構え、当時のエスパルスの選手や日本代表の秘話などを事細かに語ってくれたゼムノビッチは、

 

「監督が戦い方を決めます。選手は一生懸命その戦い方をしてくれます。それで試合に勝てなければ、それは監督の責任です。」

 

と言ってマイクを置いた。

 

今思えば言っていることはごく普通だし、当時の僕もそう思っていたはずだ。

しかし、2時間近く楽しそうに、熱く戦術を語ってきてからの、この台詞である。

「私の話はこれで終わりです」「以上です」などの締め台詞のない、珍しい締めくくり方に妙に感銘を受けたものだ。

 

これが外国人特有の話術か。(当たり前だけど)僕にはできないし、下手したら殆どの日本人は出来ないのではないか、とふと思った。

 

プロの監督の話をじっくり聞けたことだけでなく、このようなスピーチの技法に触れられたこともあってか、なんとなく聞きに行ったこの講演会の記憶は今でも鮮明に残っている。

 

何もサッカーに限った話ではない。その道の達人の話を生で聴くことは、少年少女にとって代替しえない素晴らしい経験になる。

どのジャンルにおいても、達人というものは経験値が桁違いであり、それゆえか、何かしら常人とは違う光るものを持っている。

しょうもないバカップルや中途半端なYouTuberに熱狂するのも別にいい。そんなことにまでケチをつけるつもりはない。が、できれば子ども達にはできるだけ早く、そういった達人たちの生の話を聞かせてあげたいものだ。まぁ、自分子どもいないけど。てか結婚もしてないけど。言ってしまえば彼女すらいないけど。

 

ゼムノビッチさん、あの時は素晴らしい講演をありがとうございました。これからも日本サッカーをよろしくお願いします。

 

The greatest education in the world is watching the masters at work.

世界で最も素晴らしい教育とは、仕事中の達人を見ることだ。

マイケル・ジャクソン (アメリカの歌手)