空中戦で最も重要なこと
流経大柏(現在は鹿島アントラーズ)の関川郁万、青森山田(現在はアビスパ福岡)の三國ケネディエブス、そして日本代表の冨安健洋。
この3人を見ていて思ったことがあるので、少し書こうと思う。
昨日ツイッターにも書いたが、今回のテーマは「空中戦(ヘディングの競り合い)において、身長はそこまで重要ではない。」というもの。
身長が平凡でも、空中戦で世界と渡り合うことは可能だと思う。身長は「あると有利」って程度。(ただ、ジャンプ力も低いとなると、流石に厳しいかな。)
大事なのは、落下地点を素早く見極め、相手より先にそこに入り、相手が入れないようにブロックすること。そうすれば空中戦には勝てる。
ボールが蹴られた→こっちに飛んでくる→軌道を見てどこに落ちるかを予測する→落ちる場所に素早く移動→相手もそこに来るが、ベストポジションは奪わせない
こんな感じ。
実際、槙野も昌子も182しかないのに、これが上手いがゆえに世界の巨人たちに空中戦で負けない。
※昨年、昌子が長期離脱から復帰したばかりの頃、ACLで水原三星に空中戦で負けまくっていたが、あれは落下地点の予測能力が落ちていたからだと思う。身長は当然ながら、ジャンプ力もそう簡単に落ちるものではないので。
そしてこれは、流経柏の関川も同じ。身長はさほどだがボールの落下地点の見極めが異様に上手い。
高校サッカー決勝での先制点が良い例。
伸びてくるボールに対して、周りの選手が全員落下地点を見誤りボールに反応できない中、関川だけは完璧な場所に走り込んでいた。あそこまで来たらもう身長はあまり関係ない。あとは合わせるだけだ。
では、身長192cmの三國ケネディエブスはどうか。クロスやロングスローが何度も彼の前に落ちたり、彼の頭を超えていったりして、彼のヘディングは脅威にならなかった。もちろん、彼が囮として使われていたのもあるし、相手が徹底的に彼を警戒して、移動の邪魔をしていたというのもあるだろう。ただ、関川に比べるとあまり落下地点予測が上手くない印象は受けた。
これはプロに入ってから伸ばしてほしい。そうすりゃ空中戦は無敵。
まあ、関川が凄すぎるんだけどね。鹿島が期待する選手はやはり格が違う。
自分もセンターバックをやっていた人間だからわかるんだけど、ハイボールの落下地点を見極めるのは本当に難しい。
カーブがどの程度かかっているか、ボールがどの程度落ちてくるか、逆に伸びてくるか。風にも左右されるし。
もちろん、難しいのは攻撃する側(アタッカー)も同じ。アタッカーの場合はセンターバックとは違い、落下地点を見誤っても、「ミスったら終わり」という恐怖がない。精神的には楽だ。ただしアタッカーは、センターバックと違い、「ヘディングできれば勝ち」ではない。目標は得点だからだ。つまり、ゴールも見ながらそれをやらなきゃいけない。これは恐ろしいほど難しい。
これが世界一上手かった(と個人的に思っているのは、元ドイツ代表のミロスラフ・クローゼ。
ヘディングゴール集↓
https://m.youtube.com/watch?v=ns0oyH1x8fs
身長は182cm。ヘディングの神とさえ言われてきた割には小柄な印象を受ける。(バク転パフォーマンスからも分かる通り、ずば抜けてジャンプ力が高かったので、ジャンプ時の最高到達点は身長195cmの選手と同じくらいだったと思うけどね)
ただ、彼のヘディングの最大の特徴は、居場所の良さだった。つまり、ボールが落ちてくる場所に瞬時に位置取りできるのだ。
相手はクローゼに一足先にベストポジションを奪われてしまい、花見の席取り合戦に負けた人のごとく、舞い落ちてくるボールに対して中途半端な場所から頭を伸ばすことになる。そりゃ勝てないよね。
他にも、175cmながら空中戦でワールドクラスの強さを誇るチチャリート(ハビエル・エルナンデス)、178cmながら世界屈指の空中戦の強さを持ち、日本代表を散々苦しめたティム・ケーヒル
彼らもなにかと「背は低いがジャンプ力が高い」と評価される。だが個人的に、バケモノ級にジャンプ力が高い印象は受けない。普通に高い、そんなレベル。
彼らが空中戦でワールドクラスの活躍を見せてきたのは、この記事に書いてきた能力の高さのおかげだと思っている。
終わりに
空中戦の際の落下地点予測に関しては、練習するしかないと思う。指導にも限界があるし、プレー動画を見ていてもどの程度参考になるのやら… 選手の思考回路まではわからないよね。
しかし、練習を重ねて落下地点予測の達人になれば、身長が180前後でも、世界と戦えるだけの空中戦の強さを手に入れられると思う。具体例は、アタッカーなら先に挙げたエルナンデス、ケーヒル、ディフェンダーならカンナバーロやイバル・コルドバ。彼らは皆、身長170cm台。
イバン・コルドバに至っては170ちょいだ。それでも彼は世界最高のセンターバックとして君臨していた。(カンナバーロは2006年にバロンドールを獲ったし)
プレーする人も観る人も、「身長が低いから空中戦ダメ」というネガティブな固定観念にとらわれず、「実は空中戦は奥が深く、身長は勝敗を決する1つの要素に過ぎない」ということを知っておいてほしい。