hasu-footballのブログ

サッカー関連の記事多め。何かしら得ることのある内容にするつもりです。

ついに心療科に行ったら「うつ病の可能性が高い」と診断された件

太陽が陰り始めた11月初日の昼。僕は駅チカのシャレオツな心療科にいた。


バックストリートボーイズが問う。「Tell me why?♪」
僕は答える。「死にたい気持ちが収まらないからさ♪」

 

心療科デビューとその内容
到着してすぐ、問診票を渡された。50問くらいあっただろうか。ここで格好つけても恋人ができるわけでもないし、正直に回答した。性欲に関する問いにも、「少し落ちている」と真顔で回答した。なんとも言えない項目には、断定を避けた回答をした。

その後2時間ほど待ち、ようやく我が出番がやってきた。やっと私の出番か。いざ参ろうか。と、僕はドヤ顔で個室に侵入した。


医師は、なんの印象もない男性だった。

医師「どうされましたか。」

僕「ぼんやりとした自殺願望が消えないんです。」

医師「いつからですか。」

僕「2ヶ月ほど前からです。」

医師「何か思い当たるきっかけはありますか。」

僕「ピンポイントの原因はありません。ただ、今の仕事や収入に満足していなくて、理想像とかけ離れていることに、だいぶ前から絶望しています。」

医師「転職は考えていますか。」

僕「少し前までは転職活動をしていました。でも最近は転職活動をする気すらありません。」

医師「わかりました。他に何か、以前と異なることはありますか。」

僕「虚無感があります。例えばスポーツを見ているときに、つい『サッカーなんて人がボールを蹴ってるだけじゃないか、ラグビーなんてボールを抱えて突進するだけじゃないか、野球なんてボールを投げて打つだけじゃないか、他のジャンルだと、音楽なんて人が声を発しているだけじゃないか、映画なんて人が書いた脚本に沿って俳優が演技しているだけじゃないか』と考えてしまいます」

医師「それで、趣味も楽しめなくなってきたと。」

僕「そうですね。何が楽しくて生きているのかわかりません。」

医師「問診票も見ましたが、率直に申し上げると、蓮さんはうつ病の可能性があります。気持ちの落ち込みやぼんやりとした自殺願望は結構多くの人に湧き起こるものですが、数日も経てば消えるものです。しかし…蓮さんは2ヶ月もそれが続いていますね。趣味も楽しめなくなったとのことですし、一度の診察で断定はできませんが、可能性は十分にあります。」

僕「やはりそうですか…」

医師「お仕事はどうなさっていますか。」

僕「続けています。」

医師「働けますか。」

僕「はい。なんとか。」

医師「…とりあえず、1週間休みましょう。そして来週また来ていただいて、その時の様子次第でお薬の処方箋と、中期休暇が必要な旨を記した診断書を出します。」

僕「わかりました。ありがとうございました。」

 

とまあ、こんなふうにして僕の心療科デビューは幕を閉じた。なんとなーくわかっていたが、やはり僕はうつ病の可能性が高いらしい。

 

診察後に思ったこと
うつ病ねぇ… まさか俺がねぇ。メンタルの強さを羨ましがられてきた俺がねぇ。いや、イニエスタブッフォンキャリックうつ病になったくらいだし、メンタルの強弱は関係ないか…

でもなぁ… ニコニコ笑顔で働けているし、素敵な女性を見たら心が躍るし、以前ほど楽しめないとはいえ趣味を放棄したわけでもない。なにより、相変わらずツイッターは絶好調だ。(草)

そこで僕の頭を、一つの疑惑が過った。

 

本当にうつ病なのか?
常日頃から気分が落ち込んでおり、死にたい気持ちが無くならず、友人や(少しうざい)人事部のお方から「最近元気ないね」と心配されているのは事実である。
しかし、だ。社会人なんて皆そんなもんだ!と思う人もいるだろう。僕もそう思っていたし、だからこそ異変に気付いてから2ヶ月も、医者にかからなかった。そして診察後にも、本当にうつ病なのか?と医師を疑っていた。(←何様)

 

振り返ればヤハリうつ
しかし今思えば、やはりおかしかったのだ。
かつてないほどに趣味への関心を失ったし、転職活動をできなくなったし、知力も落ちた(気がする)。最近はツイッターで目にしたバズツイートを、一度読んだだけでは理解できないことも多い。本を読むのも遅くなったし、こうして文章を書いていても、大学時代に何人もの教授に称賛された表現力や語彙力を上手く使えなくなっていることに気づく。

 

もっと多彩な語彙を使って上手く表現できることがわかっているのに、それが何故かできない。マジでつらみ。

 

他者とのやり取りを思い出しても結果は同じだ。以前は友人に「蓮大丈夫?」と聞かれて「大丈夫大丈夫!社会人なんて皆死にたいっしょ!ここは自殺大国日本だぜ!HAHAHA〜!」と狂ったように答えていた僕も、最近は我慢の限界を迎えていたのだろう。「全然大丈夫じゃない。消えてしまいたい。」と答えるようになった。

 

先月には、そんな僕を本気で心配してくれた心優しき同僚Nがイタリアンを奢ると言ってくれたのだが、店でも「もっと色々なところに旅行に行きたかった」「もっとサッカーの試合を生で観戦したかった」と言ったような、まるで余命1ヶ月の老人のようなセリフばかり放っていた。(Nには申し訳ないことをしたので、結局割り勘にした。)

よく「うつ病はなかなか自分で気づけない」というが、あれは本当だ。専門家の言うことをナメちゃいけない。そもそもなぜ僕はナメていたのだろう。バカだなぁ。あぁ、またぼんやりとした自殺願望が…………

 

映画「ツレがうつになりまして。
軽い余談になるが、僕が心療科に行くことを決心した理由の一つに、名作映画「ツレがうつになりまして。」の存在が挙げられる。

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この映画は、漫画家の細川貂々氏が実体験を描いたエッセイを、映画化したものだ。主演は堺雅人宮崎あおい。(ねえ、何でiPhone宮崎あおいの変換が一発でできないの?宮崎葵って誰?)


主人公の夫(ツレ)はエリートサラリーマンだったが、ある日突然「死にたい」と言い出した。うつ病と診断され、会社を退職。漫画家の主人公と二人三脚で闘う日々が始まる…という話だ。

この映画の凄いところは、これだけ深刻な事態を軽いタッチで描いていることである。僕は映画しか観ていないが、不思議と重苦しい気持ちにならなかった。(2〜3箇所、うつ病の恐ろしさをリアルに描いた描写がある。そりゃあるよね。だが決してトラウマになるようなものではないので、ご安心を。)

 

批判はある。うつ病の時は退職ではなく休職が良いとか、主人公の周りにいい人しかいないとか、ラストのファンタジー感は不要だとか、宮崎あおいが可愛すぎるとか、色々批判している人がいるが、そんなことはどうでもいいと思う。(ただし1つ目の、退職<休職はガチ。)
しかしこの映画は、うつ病のリアルをわかりやすく描き、「うつはサボりだ」という根性論者の偏見を諭し、僕を心療科へ行かせてくれた。堺雅人宮崎あおい大杉漣ら実力派俳優たちの演技も最高である。紛れもない傑作映画。
是非、多くの人に観てほしい。Netflixにあるよ。

 

追記 心療科、人が多すぎィ!
話は変わるが、心療科デビューで個人的に驚いたのが、人の多さだ。平日の昼間なのに、ロビーの椅子は全て埋まっていた。帰り際に受付の女性に「いつもこんなに混んでいるんですか?」と尋ねたところ「そうですねー。休日はこの倍は混んでいます」とのことだった。

そんなわけあるかい!と思って他のメンタルクリニックを調べたが、どうやらこのクリニックは2週間待ち程度で予約を取れるだけマシなようだ。

 

スッカスカのヘンテコ心療科を舞台にした、奥田英朗氏の傑作コメディ小説「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」を読んでいた僕は、あれは極端な例だと知りつつも、心療科はせいぜい歯医者程度の混み方だろうと予想していた。しかし現実はその何倍も過酷だった。

心を病んでいる人の、なんと多いことか。仲間の多さに安心したような、絶望したような、奇妙な気持ちになった。


僕は以前、「日本は治安が良い? お前は何を言ってるんだ。他殺が少ない分、自殺が多いじゃねえか!」というジョークをネット上で目にしたのを思い出した。
日本の自殺率が世界的に見ても高いのは有名な話だが、実際に現場を見ると、その深刻さに胸が痛くなる。

(ちなみに自殺率ランキングは以下の通り。日本は一位ではない。隣国韓国は日本よりも深刻。https://english.cheerup.jp/article/5223?page=1 )

 

なんだか偉そうに自殺率がどーのこーのと上から目線で書いてきたが、ぶっちゃけ今の僕には他人の心配をしている余裕はないし、日本人に自殺が多い理由を考える余裕もない。この文章だって、あまりに暇で死にたくなってくるから仕方なく書いているのだ。(やけくそ)

 

まあ、うつ病だと思えば仕方あるまい。

 

何はともあれ、1週間は仕事から解放されることが決定した。何もする気にならないが、布団の気持ちいい季節になったことだし、じっくり寝るとしよう。

それにしてもまったく、診断書は偉大である。あの4000円の紙切れ一枚で、労働地獄から解放されるのだから。やほー。

 

終わりに
呑気に書いてきたが、心は荒んでいる。もし本当にうつ病だったら、1週間で良くなるわけがない。前述の「ツレがうつになりまして。」では、医師から半年〜1年かかると言われていた。
1週間というのは、あくまでも様子を見る期間だ。

 

長い道のりである。果たして僕は職務に復帰できるのか、そもそも社会人に復帰できるのか、できなかったら、僕はどうすればいいのか。転職活動すらする気の起きない今、行き先は見つかるのか。言いようのない不安と絶望感をひしひしと感じているが、これは薬を飲めば消えてくれるのだろうか。

 

数年前、大学に入学した時、僕は明るい未来を信じていた。偏差値にして70近い学力があり、文系だが理系科目もそこそこ出来る。人見知りはするが、コミュ力は別に低くない。友人は比較的多い方だ。サッカーのクラブチームでキャプテンを務めた経験もあり、メンタルにも自信があった。
これだけ揃っている自分が、まさかうつ病になって会社を休むことになるとは。あの時は全く想像できなかった。

 

あのころ思い描いていた夢は、遥か遠くに遠ざかってしまった。今僕が歩いているのは、終わりの見えない暗いトンネルだ。


そのトンネルは長く、先が見えない。終点に、以前の活力に満ちた自分が立っているのかすらわからない。そもそも、終点があるのかもわからない。

 

だが、終点があると信じるしかないのだろう。信じることをやめたら、そこで人生という試合が終了してしまうのだから。