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森保一はなぜ親善試合で全力を尽くさないのか

最近サッカーファンの間で「森保一解任論」が加熱している。原因は、U22のコロンビア戦、フル代表のベネズエラ戦、そして先週のE-1杯で、低調な内容と成績に終わったことだろう。

 

目次
森保一の親善試合に対する姿勢
森保一は真剣勝負では結果を残している
なぜ彼らは親善試合を重視しないのか。
「真剣勝負で勝てるならいいけど、本当に勝てるのか?」
我々は森保一を信じるしかないのか。
まとめ
余談 もしも僕が東京オリンピックを観れなかったら


森保一の親善試合に対する姿勢
しかし僕は、批判はともかく解任論はナンセンスだと思う。森保一は親善試合を「選手選抜の場」「システムをお試しする場」くらいにしか思っていない監督だ。これは選手選考や選手起用から明らかだ。

そしてこれは、前監督ハリルホジッチと同じである。彼も親善試合を重視していなかった。昨年、JFA会長に電撃解任された時に彼が放った「まさか親善試合を理由に解任されるとは」という言葉は非常に有名で、近々聖書にも載ると言われている。
冗談はさておき、ハリルホジッチの通訳を務めていた樋渡群氏のご兄弟である樋渡類氏によれば、森保一ハリルホジッチと最も親しくしていた人物らしい。彼らは親善試合に対する姿勢が似ていたからこそ、親しくなったのだろう。

 

森保一は真剣勝負では結果を残している
森保体制になってからの真剣勝負は、アジアカップとW杯アジア二次予選の2つだ。
アジアカップでは序盤に苦しんだものの、大迫が負傷で離脱する中サウジアラビアやイランを破り決勝に進んだ。決勝では帰化選手を複数人擁し、毎日同じメンバーで練習する"クラブチーム"と化したカタールに惜しくも敗れた。相次ぐ負傷の影響で、本職ボランチが柴崎しかいなかったのも大きく響いた。
W杯アジア二次予選では、ここまで全勝。イランや韓国やUAEといったライバル国が苦しむ中、オーストラリアと共に順調な戦いを見せている。

※なお、アンダー世代で臨み、兵役免除をかけた韓国に決勝で敗れたアジア大会に関しては、主力を呼べなかったので除外する

このように、真剣勝負では結果を残しているのが森保ジャパンなのだ。この点でも、ハリルジャパンに似ている。

 

なぜ彼らは親善試合を重視しないのか。
親善試合も全力で戦ってほしいと思う人は多いだろう。だがそれは、出来ない頼みだ。これには5年前に日本サッカーが味わった悪夢が関係していると思われる。
本田圭佑香川真司遠藤保仁らを擁したザックジャパンは、親善試合であろうと選手選考からシステムから全力で戦った。キリンチャレンジカップはもちろんのこと、欧州遠征でも素晴らしい内容・結果を残してきた。
国民はサッカー日本代表の試合を(例え親善試合であっても)心から楽しみにし、選手たちをアイドル視し、某選手がW杯前に口にした「目標は優勝」という言葉の実現を半ば本気で期待していた。スポンサーやテレビ局もウハウハだったろう。
しかし、W杯の結果は散々だった。コートジボワール戦は、先制点以外ろくにチャンスも作れずに同じパターンで2失点し敗戦。ギリシャ戦は早い段階で10人になった相手に1点も取れず引き分け。コロンビア戦は2006年W杯のブラジル戦を彷彿とさせる圧倒的惨敗を喫した。最後にハメス・ロドリゲスが見せた日本を嘲笑うかのようなループシュートは、日本国民に屈辱感と絶望感を植え付けた。我々日本国民が見たあんなにも華やかな夢は、わずか2週間で破れてしまった。

この悲劇や、対照的にこの大会で躍動したハリル率いるアルジェリア代表、そして、前評判の良くなかった前回大会の岡田ジャパンの例から、勘の良いサッカーファンは学んだ。
「親善試合で本気を出しても意味がない。むしろ対策を練られてしまい、肝心のW杯で勝てなくなる恐れがある。リスキーだ。」
これは、現代サッカーの主流が「自分たちの良さを出すサッカー」から「相手の良さを封じるサッカー」へと転換したことや、技術が発達してスカウティングの精度が上がったことも関係しているだろう。

そして上記太字部分の仮説は、ザックジャパンの敗退から4年後、直前の親善試合で散々な試合を見せていた西野ジャパンがW杯で躍進を遂げたことで、さらに力を付けた。親善試合で悲惨な内容・結果を見せていたチームが、本戦でまさかの躍動。
「日本代表は期待されない方が結果を残せる」というのは感情論だ。「親善試合とあまりに違う日本代表に、対戦相手のスカウティングが追いつかなかった」と考える方が論理的だろう。

ところで、前述したとおり森保一ハリルホジッチと仲が良かった。また彼は、実際に親善試合の内容・結果の悪かった日本代表の方が真剣勝負で好成績を残していることも知っている。これが、彼が親善試合に全力で臨まない理由だと考えられる。

 

「真剣勝負で勝てるならいいけど、本当に勝てるのか?」
そう思う人は多いと思う。正直、僕もそうだ。こればかりは誰にもわからない。全く期待されていなかったチームが躍進し、優勝候補のチームがあっけなく敗退するのが真剣勝負の怖さだ。森保ジャパンが親善試合を重視していないことが、本戦で結果を残せる保証にはならない。
だが少なくとも、親善試合で全力を出して研究されるよりは、親善試合でベストメンバーを使わず手の内もあまり見せずにいた方が、真剣勝負で勝てる可能性は高い。これは、前述した過去の日本代表が教えてくれる。

 

「親善試合でも真剣勝負でも良い内容・結果が欲しい」と願うのは皆同じだ。だが、日本のようなサッカー中堅国にとってそれが無理難題であることは、(これもまた)過去の日本代表が教えてくれる。そんなことが可能なのは一部の強豪国だけだ。5年前に身の程を弁えず真似して痛い目にあった日本が、再び悪夢を見に行く必要はない。
では、親善試合と真剣勝負の二者択一となれば、どちらを選ぶか。真剣勝負に決まっている。あいにく森保一は、ハリルホジッチと同じく、スポンサーや電通に媚を売るタイプではない。国内の親善試合に海外の主力を呼ばなくなったことからも、それはお分かりいただけるだろう。

畢竟、肝心なのは真剣勝負なのだ。

 

我々は森保一を信じるしかないのか。
散々な親善試合を見せられても、我々は森保一を信じるしかないのか。僕はそう考えている。親善試合は参考にしない。
もっとも、そう遠くない日に始まるアジア最終予選は(E-1杯とかいう謎の大会と違い)紛れもない真剣勝負なので、ここで良い成績を残せなければ解任すべきだろう。だが、親善試合の内容や結果に関しては傍観するしかないと思う。

不安かもしれないが、思い出してほしい。親善試合やE-1杯でよくわからないサッカーに終始していたハリルホジッチは、アジア最終予選で「主力の衰え&若手が人材難のリオ世代」という選手層に恵まれない状況下で結果を残した。オーストラリア戦での戦い方が全方面から絶賛されていたことは記憶に新しい。要するに、
親善試合の内容=真剣勝負の内容とはならない。

だが、ハリルホジッチ劇場はここで終わってしまった。ご存知のとおり、JFA会長の理不尽により解任されてしまったからだ。
ここからはタラレバ論になってしまうが、ハリルがW杯本戦でも好成績を残していたら、ハッキリと一つの結論が出ていたと思う。それは、親善試合で全力を出さないハリルや森保のやり方は正しいということだ。本来であれば、この答え合わせは昨年のロシアW杯で完了するはずだった。しかし…(ry

僕がツイッターでハリル解任を批判していたのは、これが最大の理由だ。ハリルホジッチのサッカーをW杯で観たかったというのも大きいが、それ以上に、彼が長い年月をかけて取り組んできた「親善試合で全力を出さない」やり方の正否を判定したかったのだ。その結果次第で、日本代表の今後の方針が大きく定まるからである。

あの解任劇のせいで、我々はハリルのやり方が正解だったのかどうかを今も分からずにいる。そして、森保ジャパンの親善試合の結果にため息をつかながらも、「これは真剣勝負で良い成績を残すための布石のはずだ」と信じたいジレンマを抱えている。

 

元を辿れば、このジレンマの元凶はJFA会長だ。繰り返しになるが、彼がハリルを解任したせいで、ハリル流のやり方の是非を判定できなくなり、ハリル流を採る森保一の是非もわからなくなってしまっている。

昨今、ハリルとほぼ同じ状況にある森保一が解任されない理由について、ネット上では「日本人だから」「JFAと森保がコミュニケーションをとれているから」と言った声が見られるが、僕はここに「現状の種を撒いたのがJFA会長自身だから」も付け加えたい。

少なくとも東京五輪は森保体制で行くはずだ。来年、彼に率いられた若き日本代表が東京五輪でどのような戦いを見せてくれるか。我々は、それを見守るしかない。

 

まとめ
繰り返しになるが、森保ジャパンが東京オリンピックカタールW杯で好成績を残せるかなど、僕にはわからない。というか、予言者でもない限りわかるわけがない。それがサッカーというスポーツだ。
しかしながら、森保一が採っている「親善試合の戦い方」は、過去に日本代表が好成績を残した時に採用していたメソッドであり、日本のような中堅国が真剣勝負の勝率を少しでも上げるために必要な、合理的な手段だと僕は捉えている。だから僕は、彼のやり方を支持している。

 

余談 もしも僕が東京オリンピックを観れなかったら
ツイッターで僕をフォローしてくれている人ならご存知かと思うが、僕は今、うつ病に悩まされている。嫌なことや重要度の低いことにかなりの苦痛を感じ、趣味は減り、本当に好きなことをつまらなそうに嗜む(?)日々が続いている。慢性的な自殺願望もあり、実を言うとカタールW杯はおろか来年の東京オリンピックさえ観られるか分からない。
もし仮に僕が東京オリンピックを観られなかった場合、森保ジャパンが好成績を残したら「お前が信じていた通りになったよ」と報告してほしいなと思っている。宛先は…書かないでおこう。
あっ、もしグループリーグで敗退したら、何も報告しなくていいです