2018年のJ1リーグ・全チームの総括
はじめに書いておきますが、来年は今年以上に忙しくなるので、J1の試合をどの程度観られるかがわかりません。もしかしたら、このように全チームについて感想を書くことも難しくなるかも……
まずは全体の総括
史上最もハイレベルだったと言っていいだろう。俺の知人のサッカーファンが「今のJ1はレベルが高い。バカにするとかえってニワカだと思われる。」と言っていたのもわかる。欧州5大リーグ、ブラジル1部リーグ以外に、Jリーグよりもレベルが高いと確実に言えるリーグはもはや無いと言って良いだろう。DAZN参入以降Jリーグに将来性を見出し各チーム・スポンサーが資金をケチらなくなり、フロントが有能なチームはさまざまな取り組みを見せ、非常に楽しいシーズンとなった。イニエスタのJリーグ参戦もあり、Jリーグの歴史に残る一年となっただろう。
それではお待ちかね、チームごとの総括。
1位 川崎フロンターレ
圧倒的な強さを見せつけた。はっきり言って、一方的な試合になってつまらないので、川崎の試合はあんまり観なかったゾ←。史上最もハイレベルだった今季のJ1で悠々優勝。海外厨も認めざるを得ない知的なサッカーは、イタリア人ジャーナリストの目にも留まった。こんな素晴らしいチームがJリーグにあることが、日本人サッカーファンとして誇らしい。一方で課題もある。1.ベテランが多いこと(スタメンの若手は守田と奈良のみ)、2.選手層があまり厚くないこと。今季もACLを真剣に戦っていたが、Jリーグとの両立に苦しんだ印象。3.他チームが続々専用スタジアムを作ろうとしている中で、川崎は専用スタジアムを作れない状態にあること。ホームタウンは横浜県()屈指の巨大都市。(駅前の雰囲気いいよね。東芝がある方)。マーケティングが神なので、観客は増え続けているし、ファン層も幅広い。DAZNマネーをどう使うかに注目してます。
2位 サンフレッチェ広島
前半戦に怒涛の快進撃を見せ、全Jリーグファンを驚愕させた。だが忘れていた。戦力的にはJ1残留が目標のチームだったんだ… 城福の戦術が(中村憲剛に暴露されたことも響いたのか)思ったよりも早く丸裸にされ、パトリック無双も終わり、後半戦の勝ち点だけ見ればあら大変。最下位近いじゃないですか。ただし最終戦の札幌戦では底力を見せた。この順位も妥当だなと。
でも来季は補強しよう。今のメンバーはベテランばっかりだし、ACLとの両立なんて自殺行為だよ。かといってACLを捨てるとアンチが増えるの。それと川辺を1.5軍にしておくなら放出してあげてくれ。あと新スタジアム頑張って。相手は野球しか知らない人たちだから大変だろうけど。ちゃんとしたスタジアムさえあれば3万人くらい観客が来るチームだと思うよ。
3位 鹿島アントラーズ
ACLで楽々勝ち進み、1軍で戦い続けて優勝。Jリーグ側がしょうもない日程しか考え出さないせいで、仕方なくリーグ戦に2軍を送り込んで2連勝するという層の厚さも見事。鈴木優磨の急成長と、ジーコのTD復帰、そして、彼が連れてきたセルジーニョの存在が大きかった。この3つが無ければACLの優勝は無かっただろうし、リーグ戦でも4〜6位あたりに終わっていただろう。
相変わらずやっている戦術はシンプルだが、結局選手の能力が高いチームは、対戦相手をしっかり研究さえしておけば、あれでいいんだよね。変に癖がないから相手チームは対策が難しい。ペルセポリスが2試合連続で無策状態だったACL決勝を観ていて、そう思った。でも中盤に司令塔はいた方が良いかなとは思うアル。
ようやくレアンドロも復帰したし、万全の状態。クラブワールドカップ、頑張れ。
4位 北海道コンサドーレ札幌
SAPPORO 〜Leading Innovation〜
サッカーで最も大切なのは、フロントと監督。それを証明した。(もちろん選手も粒ぞろいだけどね)。昨年四方田監督で上手く行っていたのに、より高みを目指してペドロヴィッチに替えるというリスキーな采配が的中。野々村社長は日本の宝である。
このチームは戦術が実に難解で、正直、見ていてよくわからなかった。ボランチとセンターバックの動きが不規則すぎて意味不明。あれぞカオス。相手からしたら悪夢。ペドロヴィッチの戦術なんだろうけど、あれをしっかり遂行できる選手たちも素晴らしい。これぞクラブチームの醍醐味。
あとチャナティップは偉いよねえ。東南アジア向けの広告塔にもなって。プレーでも中心になって(キリンFIREのCM風)。158cmであれだけ出来る。小柄なサッカー少年の希望の星だよ。
問題児として有名なジェイが終始楽しそうだったのも印象的だった。このチームはまだ伸びる。あとは北海道のマスコミがまともに報じてくれたら最高だね。
5位 浦和レッズ
スタートダッシュに失敗し、急遽大槻組長を監督に。その組長がまさかの快進撃をリードし復活。その後は名将オリヴェイラを迎えて本格的にチームを本来の位置に戻そうと努力した。ただ、加入して早々フィットしたファブリシオが大怪我をするという不運もあり、5位に。
チームとしては、スタメンに橋岡と岩波以外若い選手がいないのが気がかり。ベテランに良い選手が多いのもわかるけど、運動量ではどうしても若い子には負けるわ。来季、どのような補強を見せるか。本気で優勝を目指すなら、ワシントンみたいな怪物を獲っても良いかもしれない。別にフォワードに限らず。憎たらしいくらい強いのが浦和でしょう。
6位 FC東京
強い!今年は強い!と思わせておいて最終的には「ギリギリ上位に入っている」のがこのチーム。ディエゴは無双、高萩も活躍、センターバックも優秀、室屋は代表に呼ばれた、あとは何が足りないんだろう… 慢性的な運動量不足と連携の悪さは長谷川健太が克服したし、あとは大物外国人かな… 今年は金もいくらか入るし、ルーカスくらいの優良助っ人を獲ってもいいかもよ。(それが結構難しい)
23区外とはいえ、首都東京のチーム。23区からそれほど離れているわけでもない。目白駅にはデカいポスターも貼られる。ここが強くなったらJリーグはもっと盛り上がりそう。もう関東圏ではサッカーが一番人気なんだから。
7位 セレッソ大阪
なんかこの順位にいるのが信じられんよね。あれだけ後半戦で散々だったのに。女子校と揶揄される緩い雰囲気に慣れてきた選手たちに、尹晶煥は厳しすぎたか。今季は杉本健勇が大チャンスでことごとくシュートを外すという非常事態もあって中途半端なシーズンに。戦術と選手の質は高いのに、終盤戦は覇気が消えていた。来季は主力が流出しそうだし、少し心配。
でも、セレッソのサポーターは総じて精神的に落ち着いていて優しいので好きです(突然)。
8位 清水エスパルス
セレッソよりも順位が下なのが意外。ドウグラスを補強した後半戦はめちゃくちゃ強かったからねー。北川は代表に選ばれるまでに成長したし、他の選手も地味にクオリティが高い。本拠地のIAIスタジアム日本平はいつも盛り上がっているし、観客層もかなり幅広い印象。こういうチームには是非とも頑張ってほしい。あとヤン・ヨンソンはやっぱりいい監督だわ。攻撃に人数を割きながらも守備のリスクを最小限にとどめるのが本当に上手い。彼をシーズン終了と同時に切った広島の選択は正しかったのだろうか…
9位 ガンバ大阪
シーズン中盤まではダントツ最下位だったのに、気づけばこの順位である。イケメン監督の就任、今野の復帰、ファン・ウィジョの復帰。この3つで劇的にチーム力が上がった。そりゃ選手層を見りゃ、ちゃんとチームとして機能すれば強いことは明々白々なんだけどさ。J2降格がほぼ決まってから監督を交代した柏とは大きな差がついたね。それと、チームを救ったFC東京戦のアデミウソンのゴールは忘れちゃいけない。俺、ガンバファンじゃないのに泣いたゾ。
とはいえファン・ウィジョの移籍話は絶えないし、来季は遠藤と今野の後釜も含めて選手を死ぬ気で探す必要がありそう。ケチケチしてると主力が負傷した時に悲惨なことになるのは、今年の前半戦で身をもって知ったでしょう。浦和同様、このチームは強い方がJが盛り上がる。来季はもっと上を目指してほしい。
あー、あのスタジアムめっちゃ評判いいし、今度行こうかなー。別にガンバファンじゃないけど。迷惑?笑
10位 ヴィッセル神戸
某氏「Jリーグは話題性がないから報道されない」
神戸「ポドルスキ獲得! イニエスタ獲得! 新監督にグアルディオラの憧れ・リージョ!」
今季、Jリーグ・日本サッカーに最も貢献したチームだろう。
今季のJリーグはレベルが高かったこともあり、この2人が加入しても負けることが多かった。リージョの戦術も、選手たちがミスするために上手く機能しないことが多かった。これに関しては来季補強するしか… 神戸「ビジャ獲得! アドリアーノ、カイオ、山口にオファー!」
見事。ただし運動量足りなすぎるのが不安でもある。山口は守備面での運動量を補えるかもしれないが、正直それなら伊野波や藤田でもいい気が。だって山口って攻撃面で全然効果ないぜ。イニエスタの相方が務まるとは思えない。
とはいえ、夢のあるチームである。日本にバルサを作りたい、優れた手本と指導者を呼んで日本サッカーを成長させたいという壮大なビジョンには憧れる。さすが三木谷氏、サッカーに金をかけることの重要性と効果を把握してらっしゃる。もちろん趣味の一環でもあるんだろうけど。笑
はっきり言って、神戸のやり方を批判している人は老害にしか見えない。日本は経済成長など目指さなくて良い!とか言ってる某内田氏みたいだよ。俺は応援するよ。ただしカイオと山口の獲得には反対。
11位 ベガルタ仙台
前半戦だけで11得点を挙げていたエースの西村がシーズン途中でロシアに移籍するという非常事態にも冷静に対処。戦力を見れば、今季のJ1で特に苦しまずに残留できたのは偉業だ。(まあ有名選手がいないというだけで、地味に良い選手は沢山いるんだけどね)
本拠地も毎回結構埋まっているし、地域にしっかり根付いている印象。やっぱり監督とフロントって大事だよ。マジで。イケメン監督にあっぱれ。あと今度プライベートで仙台に旅行に行くんですけど、どこかオススメあります?笑。
12位 横浜F・マリノス
エスナイデル顔負けの異常なハイラインのためにネタクラブとして扱われることが多かった今季。全ポジションに優れた選手がいることを考慮すれば、もっと良い順位でもおかしくなかったとは思う。とはいえ、全体的にラインを下げすぎる日本で、あのハイラインを実践し、そこそこ成功させたのは、日本サッカー史に名を刻む偉業だ。(言い過ぎか)
来季はシティとの提携を武器に大物を獲得しよう。ウーゴをクビにするってことはある程度その意志はあるんでしょう? 楽しみにしてるネ。
13位 湘南ベルマーレ
降格可能性が高いとか書いてすみませんでした。あのサッカーを、一年を通してやり続けたのは異例のこと。普通やりたくても出来ないヨ。ルヴァンカップもあるし無理やろ…と思っていたが、俺は曹貴裁と湘南の選手たちを侮っていたようだ。
若手を積極起用するチーム、だぁーい好き。
ライザップが事業を膨らましすぎて赤字()なので必ずしも先行きが明るいとは言えないが、昇格してすぐ降格が定番だったチームが残留したのは大きい。(まあ、シーズン開幕前に少し予想してたけどね。モーメントに載せてあるツイート参照)。それと、新スタジアムが楽しみだ。
14位 サガン鳥栖
今季地味に俺が応援していたチーム。トーレス獲得は無駄ではなかった。勝てなければ自動降格がぐっと近づく前節(横浜戦)で劇的な決勝ゴール。冬になってからは前線から岡崎ばりに猛烈な守備をするようになり、真剣度を伺い知れた。
もともと守備の構築(だけ)はフィッカデンティに教え込まれていたためJ最強だったが、攻撃はチグハグで、苦戦した。そこを金明輝が修正し、上位チームと互角に戦えるチームになったという印象。
良い選手が揃っているし、あの小都市にあるそこそこ大きな本拠地がいつも大入りだし、魅力のあるチーム。改めて、残留してくれて嬉しい。来季はどうなるのだろう… サイゲは資金を減らすだけで援助は続けるという話を聞いたんだけど… どうなるのだろう…(2回目)
15位 名古屋グランパス
まさに奇跡の自動残留。試合後のジョーの涙、シャビエルの大はしゃぎが印象的だった。個々のメンツを見れば優勝争いをしていてもおかしくないチームだが、風間スタイルの浸透に時間がかかり(てか結局浸透してない説)、残留がやっとというシーズンにはなった。ただ、このチームからJ1得点王が出たし、あの巨大な豊田スタジアムが何度か満員になったし、シーズンを通して最も盛り上がっていたチームの1つだと思う。ジョーがJリーグの難点をズバズバ語ってくれたので、Jリーグ全体にとってもありがたかった。大金を出してくれたトヨタ自動車も出費を後悔してはいないはずだ。(maybe)
個人的には、前田直輝加入後の大躍進がとても楽しかった。シャビエルが怪我をしたのをキッカケにブーストは終わってしまったけど、あの当時のグランパスはJ史上最恐のチームだった気がする。楽しませてくれてObrigado!
16位 ジュビロ磐田
もともと資金の潤沢なチームではない上に、金をかけて補強した主力が続々負傷離脱するという不運に見舞われたシーズンだった。田口頼みの攻撃戦術でシーズンをほぼ戦い、自動降格せずに済んだのだから褒められるべき。
それにしても最終節は不運だった。数年前のJ1昇格プレーオフで山形のGK山岸にヘディングを決められたのを思い出した。
入れ替え戦、頑張れ。平常心で戦えば勝てるはず。
17位 柏レイソル
フロント全員辞めてくれ。もうウンザリだ。俺の友人にはレイソルファンが多いんだよ。彼らとJ1の話が出来なくなる。困るアル。
第一あなたたち、サッカーを知らないでしょ。Jリーグナメてるでしょ。昨年から一人で失点を減らし続けてきた中村航輔が長期離脱していたとはいえ、あの戦力でJ2降格って、逆に難しいぜ? なぜあれだけ悲惨な状態でも監督を替えなかった? なぜあれだけ大きな都市にありながら、1万5000人収容のスタジアムしか無い? そしてなぜ、相手によってはそれすら埋まらない? マーケティングをサボるとどうなるかは日立製作所が痛いほど知っているはずなのに、何も活かせなかったことに失望だよ。今回の降格でフロントを刷新しなければ、また数年後に同じ轍を踏む。その意味で降格は絶好のチャンスだと捉えて、改革してくれ。
18位 V・ファーレン長崎
最下位には終わったが、素晴らしい戦いぶりだった。数年前にチーム自体が消滅しそうだったこと、少ない資金力と戦力であれだけ戦えたこと、そしてチームマスコットがダントツで可愛いこと。この3つは堂々と誇っていいと思う。
相当練りに練ったであろう戦術は、金を使って大幅な補強を実施した他チームに後半戦で攻略された。だが、長崎に同じように資金があれば、あれは防げた。つまりは金で負けたのだ。それ以外は十分J1レベルだ。特に、複合施設型新スタジアムと、チームを地域に浸透させるための高田社長の斬新な取り組みは実に面白い。
今季、さまざまな取り組みでJリーグを盛り上げてくれた。全国テレビにも出たし。こんな楽しみ方があったのかと驚くことも多かった。今季のJ1をエンターテイメントの側面から最も盛り上げてくれたのは、実は長崎かもしれない。
負けが続いても下を向かず「サッカーには夢がある」と語り続ける高田社長の姿は、Jリーグの全サポーターを味方につけたことだろう。
フロントが優秀なチームは必ず伸びる。
ゼイワン復帰、お待ちしています。(てか俺はどの立場からこんなことを言っているのだろう…)
J1昇格プレーオフにおいて、上位チームは有利なのか。
先週、J1昇格プレーオフ第1戦で、5位大宮アルディージャが6位東京ヴェルディに敗れた。
ところでこの試合、大宮は順位が上ということで、「引き分けでも2回戦進出」という特典があった。(一方、順位が下の東京ヴェルディは、勝つしかなかった)
これは、「大宮に有利」と考えるのが普通だろう。Jリーグもそう考えているからこのような仕組みを作ったのだろう。
しかし、先週のこの試合を観ていて、その考えを覆された人は多いのではないだろうか。
なぜなら、「引き分けでもいい」大宮が、引き分け狙いの守備的サッカーをしてしまい、ヴェルディに一方的に攻められる展開が続いたからだ。大宮が攻撃に力を入れていないのは、見れば明らかだった。
「俺たちは勝たなくてもいいんだ。0-0でいい。守備を固めよう。」という意図が透けて見えた。
しかし、これによってヴェルディは活気付いた。なにせ相手は、ろくに攻めてこない。
サッカー経験者ならわかると思うが、相手がろくに攻めてこないと精神的に非常に楽になる。両サイドバック(あるいはウイングバック)も積極的に攻撃参加できるし、実に戦いやすい。
守備を固められると点が取れないというのは当たり前の話だが、ヴェルディには都合が良かったはずだ。名将ロティーナのもとで攻撃の戦術を徹底的に練っているチームだから。攻撃に専念させてもらえたことは相当ありがたかっただろう。
ちょうど、攻撃戦術に力を入れていたザックジャパンが、守りを固めるアジア勢にはやたらと強かったのと同じように。
これを石井正忠監督の采配ミスだと言うのは容易だ。しかし、「大宮は引き分け以上で2回戦進出」「ヴェルディは勝たないといけない」という2つの条件をちらつかせれば、「相手は焦って攻めてくるだろうから、守備に人数を割こう。」と思ってしまうのが自然だ。前述したようにヴェルディは攻撃のアイデアが豊富だし。前線には好調の林がいるし。
そして、そのやり方は正しかったかもしれない。(実際、ヴェルディの決勝ゴールはセットプレーから生まれたもので、流れの中で大宮が崩されることは無かった。)
何が言いたいのかわからないかもしれないが、要するに、
「上位チームは戦い方の選択肢が2つある(勝ちor引き分け狙い)が、下位チームは1つ(勝つ)。精神的に一致団結して1つの方向に進めるのはどちらか」
という話だ。無論後者だろう。選択肢は多ければ良いというものでもない。かえって「あっちの方が良かったんじゃ…」という戸惑いの原因になることがある。サッカーのようなチームスポーツにおいて、自分たちのやっていることが正しいのか確信できなくなるのは致命的だ。ましてや一発勝負では。
選択肢が2つあると、かえって監督が悩み、チームの方向性も定まりにくくなる恐れがある。ましてや普段ドン引き守備固めサッカーをしていない上位チームとなれば、なおさらだ。
日曜日、J1昇格プレーオフ2回戦が行われる。ここでも、3位の横浜FCと6位の東京ヴェルディの対戦ということで、横浜FCには「引き分けでも突破」という特典が与えられている。
だがこれが必ずしも有利に働くとは限らず、むしろ不利になる可能性さえあることがはっきりしている。
横浜FCは引き分け狙いで大宮が失敗したのを見ている以上、勝ちに行くだろう。おそらく。ここは特に言及することはない。面白い試合になりそうだ。
さて、最後に、J1昇格プレーオフ3回戦(すなわち、J1J2入れ替え戦)だ。
ここでもまた、J1側のチームは「引き分けでもJ1残留」という状況に立つ。
・入れ替え戦に参戦するのが名古屋グランパスなら、引き分け狙いの戦い方はしないだろう。彼らは上位相手でもガンガン攻めに行く。笑
・問題は、その他のチーム、すなわちジュビロ磐田、湘南ベルマーレ、サガン鳥栖だ。これらのチームはそれほど攻撃的なサッカーをするわけではないし、どちらかと言えば守備力の方が自信がある印象。(鳥栖は守りを固めるとJ1で一番堅い説あるし)
仮にこの3チームのいずれかが入れ替え戦に進出した場合、大宮が採ったような過度に守備的な戦い方をする可能性がある。しかしこれは非常に危険だ。どれだけ守備を固めても、セットプレー(コーナーキックやフリーキック)で一発でやられる危険性がある。
守備固めをしてはいけない。「負けなければJ1残留」という甘い誘惑に惑わされず、あくまで勝ちに行く、それが勝利を手にする最善策だと、俺は思う。
追記: このようなことがあるからこそ、サッカーでは、「(勝たなくても次に進めるけど)勝ちにいきます」というコメントがよく聞かれるのだ。そう。別に格好つけたいとか、負けたくないとか、点を取りたいとか、そういうわけではない。「引き分け狙いの難しさ」を知っているから、勝ちに行くのだ。(多分)
追記2: 結論を書き忘れたので付け足します。笑
上位チームは精神的にはむしろ不利である。しかし、それさえ克服してしまえば、引き分けの時に上位優遇システムに感謝することになるだろう。結局、考え方・メンタル次第なのだ。
Jリーグが世界に誇れること
Jリーグのレベルは上がってきており、もはやJリーグよりも明らかにハイレベルだと断言できるのは欧州5大リーグとブラジルのトップリーグくらいだろう、という趣旨のツイートをしたことがある。
昔ならこういったツイートには罵詈雑言が飛んできたものだが、最近では賛同意見がほとんどだ。ここ2〜3年のJリーグをしっかり見ている人なら、冒頭に書いた意見を否定することはもはや不可能に近いとわかっているのだろう。
反対するのは、最近のJリーグを観ていない人・そして初めから「Jリーグは低レベルだ、低レベルでなければならない」という固定観念に雁字搦めになった状態でJリーグを観ている人だろう。
明らかにレベルは上がっている。これは疑いようのない事実だ。
さて、今回はそんなJリーグが、堂々と世界に誇れること についてのお話。
どうせなのでクイズ形式で。
Q.Jリーグには、世界一とさえ言われている、ある「誇らしいこと」があります。何でしょう? (答えは5行下に)
A、スタジアムの治安と、客層の多様性
よく言われていることなので、「なーんだ、そんなの知ってるアル。」と思った方はこの先は読まなくてもいいと思います。
そうでない人に向けて説明します。
1、スタジアムの治安について。
サッカースタジアムに行ったことがある人にお聞きします。あなたはこれまで、スタジアムで「命の危険」を感じたことはありますか?
("雷がヤバかった"等の天災系、あるいは"酒によった状態で階段を登っていたらバランスを崩した" 等の自業自得系はナシで。by経験者)
いかがでしょうか。おそらく、無いのでは…?
なにせ、1万人に聞いたら9997.8人は無いと答えるだろう質問だからね。選手たちはたまーに乱闘に巻き込まれたり悪質なタックルを受けたりして命の危険を感じることがあるだろうが、観客にそう言うことがあったとすれば、それはかなりのレアケース。
というのも、Jリーグは治安が良いからだ。
海外のスタジアムを見ていると、タトゥーを入れた男たちが殺気立っているのをよく目にする。(毎試合ではないが)試合中に発煙筒を焚いたり、物を投げたり、喧嘩をしたり、暴動を起こしたりする光景が見られる。
イングランドはわりと平和な印象。勝ったら大喜び、負けたらショボショボと帰る、そんな感じ。ドイツは熱いけど滅多に問題は起こさない印象。スペイン、イタリア、フランスはあまり治安が良くない。南米はヤバい。
…Jリーグでこのような光景を見ることは不可能に近い。要するに治安が良いのだ。あってもおっさんのヤジ、罵詈雑言程度だろう。(これも、よほど荒れた酷い試合でなければ耳にすることはあまり無い。)
たまに問題が起こるとマスコミが鬼の首を取ったように大騒ぎするので勘違いしている人が多いが、Jリーグのスタジアムは子どもだけ・老人だけ・女子だけでも通えるくらいには治安が良い。(ただし女子、すなわち成人していない女性が1人で観に行くのはオススメしない。未成年の女の子というのは、スタジアム内外問わず、基本的にクソ男のナンパのターゲットになる。最低でも2人で行った方がいいと思う。男子となら、なおヨロシ。)
2、客層の多様性について。
これについてはJリーグが観客のデータを公表しているので、ご覧いただきたい。
https://www.jleague.jp/docs/aboutj/funsurvey-2017.pdf
まず年齢について。
経済的に余裕のある・趣味がある程度固定化されてきた世代がメインを占めるのはどの競技でも共通だが、Jリーグは比較的分散している。若年層も増えている。もう少し増えれば最高だが、金のかからないDAZNを使う人も多いのでこれは容易ではない(俺もそうだし)。スタジアムまで毎週足を運ぶのは若者には結構しんどいんだよね。(時間も金もないので)
ただ、個人的に良いと思ったのは性別比だ。
男:女はもう何年も前から6:4で推移している。
この数字は驚異的だ。海外のスタジアムを見ればわかるが、観客の大半は男性。(女性や子どもは治安の悪さを理由にテレビ観戦を選ぶらしい。)
Jリーグファンはこのことを誇りに思うべきだ。外国からやってきた助っ人選手も、「観客に家族連れが多くて驚いた。とても穏やかな雰囲気だね」と語ることが多い。
治安が良いというのは、選手からすれば試合に集中できるということであり(名古屋のジョーはこれをありがたがっていた)、より良いプレーをできる1つの理由にもなる。
治安が悪ければ、さらに喧嘩上等の男ばかりスタジアムに集まり、その他の層は自然と排除されてしまう。悪循環・負のサイクルだ。イタリア・セリエAは長らくそこから脱却できていないためにスタジアムがガラガラなことが多い。(あと陸上競技場が多いのも1つの理由)
それが健全でないことは明らかだろう。喧嘩上等の男だけじゃ、(人生の全てをサッカーにかけているサポーターが多い南米でもない限り)スタジアムは埋まらない。
マスコミはJリーグのサポーターが問題を起こしたことばかりピックアップするが、実情は全く違う穏やかなものだということを発信していこう。スタジアムに恐怖心・嫌悪感を持っている人は意外に多い。
まとめると、Jリーグは老若男女問わず、さまざまな人が観に来れるということだ。
全くの初心者(サッカーはボールを蹴ってゴールに入れるスポーツだということしか知らないレベルの人)でも、排除されたりしない。というか、はっきり言って、バレない。(大声で「サッカーのルール全く知らん!」とか叫んだりしない限りね)
「応援歌を歌えないといけないのでは?」と心配する人がいるが、そんなことは全くない。(よくテレビに映される、ピョンピョン跳ねながら歌っている人たちは、ゴール裏にいる熱狂的なサポーターだ。大半は静かに座っている。ずーっと一言も発さずに試合を観ている人は、かなり多い。)
極端なことを言えば、相手チームの応援さえしなければ良いのだ。
※相手チームのユニフォームカラーの服は着ていかないこと。
というわけで、ぜひ一度足を運んでみてほしい。特にオススメなのは埼玉スタジアム(観やすさ、規模共に日本最高レベル)、三協フロンテア柏スタジアム(とにかく近い。恐るべき臨場感。J2にはなるけど…)、カシマサッカースタジアム(辺鄙なところにあることを除けば完璧) かな。
チームによってはゴール裏以外にも熱いファンが集まることがあるので、その点はしっかりと調べてから座席を買ってほしい。(基本的に、ゴールから遠ければ遠いほど熱いファンが減っていき、初心者の居心地が良くなる印象がある。
この写真で言えば、右上の白っぽくなっているところの周辺かな。(ちなみに白っぽいところは記者席)
今、日本各地でJリーグが盛り上がりを見せている。J1のレベルは明らかに上がっているし、J2も昔のJ1くらいにはなっている。J3でも大一番では1万人を超える観客が入るという盛り上がりようだ。
Jリーグは今後、チームが日本全国に分散していることを武器に、日本のスポーツ界を引っ張っていく可能性が高い。その理由は、実際に観戦に行けばよくわかるだろう。
テレビで観るのとは全く違うことに驚くはずだ。
サッカー日本代表と名探偵コナンと日本の音楽界
タイトルの意味がわかった人はいるだろうか。いたとしたら半端ない教養と頭の回転の持ち主だろう。恐れ入る。
1000人いたら999人はわからないと思うので、少しずつ解き明かしていく。
まず、サッカー日本代表。
ここで言いたいことを説明する上で、もっともわかりやすい例を挙げよう。↓
それは、「サッカーに関係のない部分のファンが多い」ことだ。
本田はカリスマ性、哲学、ビジネスへの挑戦
内田はルックス、冷静沈着な性格
彼らのこれらの要素に惹かれてファンになった人は多いだろう。それ自体の否定はしない。
しかし、これは、大きな問題を生む。
そう。「本質的でない部分を評価するファンによって、本質の評価が疎かになる」ことだ。
どういうことか。
本田圭佑の場合、そのカリスマ性を神格化したファンたちが、コンディション最悪・まともに走ることすらできない状態の本田圭佑を「試合に出せ」と擁護し、「香川なんか出すなよ」とライバル選手をディスっていた。
内田篤人の場合、そのルックスを試合で見たい女性ファンが、彼のライバルである酒井宏樹に理不尽な批判を飛ばしていた。
このように、サッカーそのものに全く関係のない部分で選手のファンになった人間が増えると、彼らの頓珍漢で非本質的な批評が、あろうかとか選手評価に繋がってしまうのだ。
※酒井宏樹の能力にマイナスイメージを持っている人が多かったのは、これが理由だ。彼は一昨年突然成長したのではない。昔から良い選手だったが、内田篤人の(アホな)ファンによって必要以上に評価を下げられていただけなのだ。本当に腹わた煮え繰り返る思いだ。
最近こんな記事を読んだ。「日本人は一人一人の選手のファンになる。だが、イギリスでは一人のファンになるということはなく、普通はチームのファンである。」
(事実、イギリスにはベッカムファンというものが殆どいなかったそうである。)
このような国では、選手評価は純粋に「能力が高いか」「チームに合うか」によってなされるだろう。羨ましい。サッカーが完全なるチームスポーツである以上、これが妥当だろう。
別に、選手一人一人のファンになるな とは言わないが、好きな選手を観たいあまりその選手の評価を過剰に見積もったり、ライバル選手をディスったりするのはやめるべきだ。
実は、これと同じ現象が、他の界隈でも起きている。
まずは名探偵コナンから。
名探偵コナンにも同じことが起きている。
すなわち、「本質的でない部分にスポットライトが当てられ、それに狂喜乱舞するファンが金を落とすので、作品の質が下がっている」のだ。
この二作の、映画レビューサイトでの評価を見てみてほしい。真っ二つだ。
高評価をつけている人は決まって「安室カッコいい!」「平次かっこいい!」と言う。
低評価をつけている人は「イケメンキャラを出しておけば客が入るせいで、ストーリーに力を入れていない。本来の醍醐味である推理モノとしての質が非常に低くなっている」と言う。
…そういうことだ。サッカー日本代表の選手評価をめぐる問題点とそっくりではないか。
映画において本来評価されるべきはストーリーの質であり、キャラクターの個性はその次のはずだ。ところが名探偵コナンの上記2作品では、キャラクターの個性ばかりに力が入れられ、ストーリーはお粗末なものになっている。そしてそれを「神作」と崇めるファンがいるせいで、どんどん映画としての質が落ちていく。
サッカーに例えれば、「カリスマやイケメン選手を大勢呼べばスタジアムは満員になるし視聴率も取れるから、勝てなくてもいいや!」という感じか。
恐ろしい。決して良いことではないだろう。コナンの場合も、気づけばコナンの真髄を楽しんでいた昔からのファンが消え、残るのはミーハーだけになっていそうだ。彼らは、カッコいいキャラが出ている他の映画に平気で流れていく可能性がある。それに、そうでなくても、平次や安室が出ていないコナンの作品になど見向きもしないかもしれない。
最後に日本の音楽界について。
ここまで読んでくれた人は、何となく予想がつくのではないだろうか。要するに、アイドルだ。
今年の紅白歌合戦を見てみよう。近年稀に見る実力派揃いの紅白ではあるが、相変わらずまともに歌も歌えない、まともにヒット曲も出していないアイドルが乱立している。
なぜか。事務所の力も無論あるが、それ以上に、単に彼ら彼女らは人気があるからだ。
歌に全く関係のないところで。
そもそも彼らの歌など、ほとんどの人が知らないし、高く評価しているのはファンくらいだろう。それでも彼らはルックスが良いしバラエティ適性もあるので人気だ。
だから、「一応曲を出しているし…」と言うことで、視聴率を稼ぎたい歌番組に出まくれるのだ。
このように、歌そのものをろくに評価されていない人たちが歌番組に出まくる傾向が特に強くなった10年ほど前から、日本の音楽界は急速に堕落した。まともな歌が売れることはまずない。いつもランキングの上位は質の低いチューハイのような、アイドル曲だ。そりゃ衰退するわな。才能を発揮して良い曲を作っても、歌に関する才能などほぼないアイドルが歌った曲に負けるんだから。健全さのかけらもない。
※たまにアイドル曲から神曲が出ることは認める。だが、売れているアイドル曲の大半が、安価なチューハイのような、バラエティ出演ついでに歌ったような曲だろう。
サッカーで言えば、世界に通用する素晴らしい能力を持った選手が、「顔がよくないから」という理由で代表チームに選ばれないようなものだ。そして、顔が良い選手はそれだけで代表に呼ばれやすくなる。と。そんなチームが強くなるわけがない。
結論
これだから名探偵コナンはwww音楽界はwww と言って馬鹿にする余裕は、サッカー界には無い。
「本質でない部分を評価する人間によって、コンテンツそのものの質が落ちていく」
冒頭にも書いたように、サッカー界でも過去に同じようなことが起きているのだ。
今後森保ジャパンの選手たちがサッカーと関係のないところで人気になる、あるいは実力以上に大物として祀り上げられれば、彼らのプレーを見たことすらないミーハーが彼らを神格化し、ライバル選手を貶し出すだろう。
これは、全力で潰さなければいけない。
日本サッカーの成長を願うのなら。
さもないと、名探偵コナンや邦楽界がその危機にあるように、日本サッカーも
本質的な部分を評価していたファンが消え、顔やキャラクターにしか着目できないミーハーだけが残る
という有様になってしまうだろう。選手にとってこれほど不幸な事態はない。サッカー環境として、最悪だ。実力を評価してもらえないのだから。これは何が何でも防ぎたい。
Nothing is more terrible than activity without insight.
(意訳) 本質を見抜くことなくただ活動的なのは、最悪だ。
トーマス・カーライル (イギリスの歴史家)
若いセンターバックはなぜ凄いのか。
最近、日本代表には若いセンターバックが2人呼ばれた。三浦弦太(23)と冨安健洋(20)だ。アジアカップのメンバーにも(少なくともどちらかは)入るだろう。
ところで、この2人、特に冨安はサッカー中継では必ず何度もピックアップされるが、なぜそこまで評価されるのかわからない人も多いのではないだろうか。
20歳でベルギーでプレーしていて日本代表にも選ばれ始めている。でも点を取っているわけでもないし、イマイチすごさがわからない… と。
冨安の何が凄いのかはこれまでツイッターで散々書いてきたので、最後の方に簡単に書く。
実は彼が評価されている背景には、センターバック(守備の中心)というポジションの特性がある。
まず第一に、評価方法が違う。
大迫や中島ら攻撃選手の評価は、基本的に加点方式だ。ゴールやアシストが多ければ、他はどんなに体たらくでも評価してもらえる。結局、点さえ取れば何とかなると言っても過言ではない。
一方で守備選手は、減点方式で評価される。
もちろん良いプレーをすれば加点されるだろうが、それでも失点をすれば評価が下がる。どんなに良いプレーを見せていても、2〜3失点したら酷評される。ましてやミスをしたとすれば、評価は急落だ。
第二に、連携の重要性が違う。
守備の選手は連携ミスがそのまま命取りになる。攻撃の選手ならば、連携をミスっても「あ〜」で終わるが、守備の選手では「何やってんだ!」「戦犯!」となってしまう。即失点に繋がるので。
第三に、経験がモノをいうから。
試しに、トップクラスのセンターバックを何人か思い浮かべてみてほしい。その中に、20代前半の選手は何人いるだろうか。ほとんどいないのでは? 若いイメージのあるヴァラン、ウムティティ、リュディガーあたりは実はもう25歳だ。他のポジションなら全く若手ではない。
これはなぜかというと、センターバックというポジションは経験がモノを言うからだ。相手の攻撃戦術を見抜く力、ドリブル封じ、パスカット、シュートブロック、ルーズボールのクリア等は、経験を積めば積むほど上手くなる。だから、一流のセンターバックになる頃には若くても25歳にはなってしまうのだ。
さて、この3つの要素を組み合わせるとどのような結論に至るか。↓
監督からすれば、
「守備陣は、1.ミスが少なくて(つまり評価しやすくて)、2.連携も問題なくて、3.経験豊富で安定したベテランを、無難に使いたい」と考えるのだ。
それが最も安全な方法だから。当然だ。
言い方を変えれば、守備陣に関しては、若手の大抜擢と言った"チャレンジ"をしている余裕がない。上にも書いたが、攻撃陣ならチャレンジして失敗しても「点を取れなかったね」で済む。だが、守備陣のメンバー構成で変にチャレンジすると、何失点するかわからない。
そのようなポジションで、冨安は20歳にして日本代表のスタメンを勝ち取っている。
彼の特徴は
・身長(188cm)
・強靭な対人守備力
・高い戦術理解力と判断力(≒サッカーIQ)
・ボランチとしてもプレーできる攻撃センス
・長距離をゴロで通せるパス精度とキック力
と言ったところか。
加えて、彼は普段、異国の地ベルギーで絶対的な戦力としてプレーし続けている。言語による意思疎通に多少の難があるため、センターバックに外国人を使うのは度胸がいる。20歳の日本人をセンターバックで使い続ける所属クラブの監督も見事だが、これは逆に言えば、冨安がそれだけ高く評価され、信頼されていると言うことだ。
そのような選手なので、もしかしたら将来的には世界最高のディフェンダーになるかもしれない。そんな規格外のポテンシャルを持った選手だからこそ、大きく扱われるのだ。
ただ正直、センターバックは他にも良い若手がウジャウジャいるので、冨安にはボランチをやってほしいなーと思わないこともない。
Jリーグのレベルは上がっているのか?
まずはこの動画を見てみてほしい。未だ破られていないJ1最多得点記録(33試合33得点)を打ち立てたアラウージョの、その年のゴール集だ。
いかがだろうか。「アラウージョ半端ないけど、ディフェンスのレベルが低いな」と思ったのではないだろうか。
俺が言いたいのは、まさにそれだ。
アラウージョのゴール集はあくまでも一例。
10年前からサッカーを観ている人なら分かるだろうが、当時(10年前)と比較して、Jリーグのディフェンスの質は大きく向上しているのだ。
個人個人の能力にそこまで差があるかは判断しかねるが、組織的守備の質は間違いなく上がっている。
でも、それは世界全体にも言えることでは?
その通り。世界的に守備のレベルは年々上がっている。(だから1人で打開できる選手が減り、つまらなくなったという声が出てくるのだ)
しかし、Jリーグの守備力は、世界のそれを大きく上回るスピードで進化しているように思える。世界との差が縮まっているのだ。依然差はあるが、昔に比べればだいぶ小さくなったように思える。これは以前書いたようにスポーツエリートがサッカーを選ぶようになったことや、組織的な守備を指導できる指導者が増えて来たことが大きいだろう。
アラウージョ(当時ブラジル代表で、あのロナウドの控えの座を争っていた)ほどのストライカーこそ来ていないが、特段衰えているわけでもないポドルスキ、イニエスタ、トーレスが無双できないことからも、Jの守備が堅くなっていることはお分かりだろう。下位チームでもしっかりとした守備を構築することができるのは、Jリーグの1つの特徴だ。
一方で攻撃力に関しては、守備力ほどの進歩はないように思える。もちろん下位チームの攻撃力だけ見れば明らかに上がっている。しかし、上位チームの攻撃力は果たしてどうか。ワシントンとポンテを擁した頃の浦和レッズ、アラウージョとフェルナンジーニョを擁した頃のガンバ大阪よりも攻撃力が高いと言えるチームはあるだろうか。(まぁ川崎は言えるかな)
これに関しては、ディフェンダーよりもフォワードの方が海外に移籍しやすいからというのが最大の理由だろう。すなわち、良いフォワードはどんどんJリーグから出て行ってしまうのだ。
そして残念なことに、DAZNが参戦するまではJ1のチームもケチケチしていたので、スター選手をとろうとしなかった。
良い選手は出ていき、代わりに入ってくる選手はパッとしない。これが、Jリーグのフォワードのレベルがそれほど上がっていないことに繋がっていたと思っている。
今年は殆どのチームにJリーグの平均値を大きく上回る点取り屋がいるため、かなりレベルが上がったような印象は受ける。そのほとんどが外国人だが、前述したように優秀な日本人ストライカーはすぐに海外に出て行ってしまう以上、仕方ないだろう。
今後は大物ストライカーの獲得を図るチームが増えてくるだろう。
戦術面はどうか。これは間違いなく全体的に上がっている。しかしそれは世界にも言えることで、Jリーグが特段伸びているというわけでもない。相変わらず柏レイソルのようにJ1にありながらろくに戦術も無いようなチームもあるわけで、戦術だけ見ればJ2の方が充実していたりする。これはJリーグの喫緊の課題だろう。その意味で、世界屈指の戦術家であるファン・マヌエル・リージョを監督に招聘したヴィッセル神戸の試みは非常に大きな意義を持つ。心から応援したい。
左がリージョ、右がグアルディオラ
☆先日、イニエスタが素直にJリーグを褒めていたことをツイートした。反応の中には「どうせリップサービスだろ」という悲観主義的な物もあったが、イニエスタはあまりリップサービスをしない選手だ。(答えづらい・あるいは嘘をつくことになりそうな時は上手くはぐらかすタイプ)
それに、彼が本気でプレーしているにもかかわらず苦戦しているのは、試合を観ていればよく分かる。(もちろんレベルの違いは歴然だが)
これらの事情に鑑みれば、イニエスタは本気で「Jのレベルの高さに驚いた」と言ったと考えていいだろう。というより、そう考えるのが自然で、むしろ「リップサービスだ」と解釈する方が不自然(かつ卑屈)だと思われる。
★とはいえ、Jリーグはヨーロッパ5大リーグに比べればまだ未熟だ。(歴史から文化に至るまで大きな差があるのだから当然のこと。よく健闘している方だ。)
ここからさらにJリーグを高めていくには、我々Jリーグファンがファンを増やして行くことが欠かせない。言い方は悪いが、お金を出す人は多いに越したことはないのだから。
J2町田のように少ない資金で強くなる組織もあるが、逆に言えば、あれは極めて珍しい例だからこそ話題になっているのだ。
普通は、ファンが多く、金がある組織の方が強くなる可能性が上がる。
悲しいことに地上波にはあまり期待できないので、(少なくともサッカーの価値を知る人たちがテレビ局の覇権を握るまでの間は)、SNSで地道にサッカーの面白さを発信するなり、友達をJリーグ観戦に誘うなりと言った、個人単位での活動が大切になってくる。というか、それしかない。川崎のように強力なマーケティング力を持つチームならまだしも、大半のチームのマーケティングにはあそこまでの効果はない。マーケティングに頼っていてはいけないと思う。
言い方を変えれば、我々がマーケティングをしようということだ。
幸い、現代はそういう時代だ。すなわち、テレビに頼らずとも、1人のインフルエンサーが時代を変えられる。
Jリーグファンにもインフルエンサーは大勢いるはずだ。SNSに限らず、現実社会でも。(SNSは似たような趣味を持つ人が固まる傾向にあるので、そうでない(つまりJリーグに興味を持っていない人が大勢周りにいる)現実社会で影響力を持っている人の力の方が、むしろ有効かもしれない。)
自分の応援するチームのファンを増やしたいという純粋な思いからでもいいし、もっと視野の広い「Jリーグを日本一のスポーツコンテンツにしたい」という野望からでもいい。
少しずつ自分たちの方法でJリーグの魅力を広めていくことが、Jリーグの成長に繋がるはずだ。
とまあ、Jリーグのレベルの話から脱線したように思うかもしれないが、そうではない。
Jリーグのレベルは上がっている。世界との差が縮まっている。しかし、まだトップクラスとは小さくない差がある。この差をさらに埋めていくためには、Jリーグのコンテンツ力を高めることが必要不可欠だろう。我々Jリーグファンも、出来ることをやっていこう。
と言うことだ。ちゃんと論理的に繋がっているのである。
※Jリーグファンのイメージを下げるようなことは絶対にやめよう。例えばサッカー中継に好きな番組を潰されて憤怒している人にクソリプを送ったりとかな。アンチを増やすだけだぜ。Jリーグファンは心が広い というイメージを作り上げよう。
(えっ…? お前が言うなって…?)
Never underestimate the influence you have on others.
あなたが他者に与える影響力を過小評価してはいけない。
ローリー・ブキャナン (アメリカの作家)
史上最高の小説の一つ : ジョージ・オーウェル 「1984年」
世界最高の文学作品は何か?
様々な答えがある。その中で必ず上位に入る傑作が、この作品「1984年」だ。
- 作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/07/18
- メディア: ペーパーバック
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イギリスでは「読んだことないけど読んだふりをしている本ランキング」で1位に輝いたこの本。1週間ほどかけてようやく読み終えたので、感想を書いていく。
あらすじ
舞台は、ビッグ・ブラザーというカリスマに率いられた党が支配する"オセアニア"という国。ある程度の知能を持つ人の家には"テレスクリーン"という監視カメラのような機械が設置されており、彼らがおかしなことをしないよう、生活の全てを党に監視されていた。
主人公のウィンストン・スミスは公務員。党にとって都合の悪い情報を改変する仕事をしていた。しかし、実は彼は、密かに党への不満を抱いていた。
本当にこの社会は幸せなのか?もっと良い社会があるのではないか?
そんな彼は、同じことを密かに思っていたジュリアという女性に出会い、2人で、党の打倒を目指す同盟に加入する。
この本の中での世界地図 (ピンクがオセアニア)
解説
この話は大まかに言えば、「近未来の独裁的管理社会に違和感を抱いた2人の男女の物語」である。
独裁的管理社会とは俺が勝手に作り出した表現だが、要するに、国家が国全体を完全に支配していて、しかも国民一人一人の生活も完全に監視・管理している社会(そこに思想や表現の自由はない) と言ったところである。
「それって社会主義やん」と解釈した人たちは、この本を「社会主義を批判した小説」と考える。実際、この本は社会主義批判のバイブルとして使われた過去がある。
ただ、実はジョージ・オーウェル自身は穏健な社会主義者、すなわち「民主主義を取り入れた社会主義」こそ最上だと考える人だった。(確か昔日本にあった民社党はこの考え方をとっていたはず。)
そう。この本は、本人も言うように、決して社会主義そのものを批判した本ではないのだ。
彼が批判したいのは、あくまで"独裁的な社会主義"なのである。
これがどのようなものかは、ここで説明するのは控える。(というか難しい)
この本を読めばわかるだろう。ゾッとするゾ。
感想
重い。けど面白い。いつかまた読もう。
この本、厚さはそこまででもない。"ちょい分厚い"レベル。何冊かに分かれたりもしていない。一冊だけ。たしか400ページくらいだったかな。そこらへんにあるちょっと長めの小説と、一見したところなんら変わらない。
ただし… 文字数がエグい。ほぼ全ページに文字がぎっしり詰まっている。多くの小説では下の方がスカスカだが、この本はぎっしり。(しかも恐ろしいことに、これだけ長いのに無駄がないのである…)
この文字数に加えて、語彙や表現の難しさも追い打ちをかける。難しく、スラスラ読めない箇所が結構ある。特に中盤〜終盤にかけて20ページ近くに渡って載せられている、同盟の教典(通称"寡頭制集産主義の理論と実践")の部分は、心が折れそうになる。もはや政治学、社会学の専門書なのだ。ただ、勉強になるので俺は読んだ。(この本を出版する当時、出版社側はこの部分を削除したかったそうだ。これに対しオーウェルは「この部分は欠かせない」と断固反対し、結局は削除されずに発売されたという経緯がある。…正直、出版社の気持ちもわかる。)
幸いストーリーの構成はシンプルで、物語の構造がわからないということにはならない。流石にそこまで複雑にすると、読むのが嫌になるだろう。この辺りの匙加減は絶妙だ。
さて、「1984年」はそんな小説だが、不思議と先を読みたくなる。適度に恋愛要素やアクション描写、芸術的な展開があって飽きさせないし、イギリスが生んだ天才作家ならではの表現力や人間描写、さらには社会風刺などは、読んでいて非常に勉強になる。しかも「うわ〜マジか〜」となるようなまさかの展開もあったりする。
だがなんといっても、最も大きな理由は、あまりにも強力な独裁政権に反旗を翻した男女がどのような運命を辿るのか、それが気になる、ということであろう。
読めばわかる。敵が強すぎることに。これが現実化したら恐ろしすぎる。流石にここまで行くことはないのでは… と思わないこともないが、一概にありえないとは言えないのも事実。
結末は言わないでおこう。割と有名なので俺はだいたいの内容を知っていたし、知っていても楽しめたが、知らない方がより楽しめると感じた。
結末や、最後についている付録から生まれた都市伝説、設定自体について色々な解釈がある名作だ。
さて、読みたいと思った人もいるのではないだろうか。いてくれると嬉しいな。
しかし、この本を読むにはある程度の読解力、語彙力が必要だ。それが無ければ初めの数ページで嫌になるだろう。イギリス人が「読んだことはないけど読んだふりをしている」のも、「読みたいし読んでおくべきだとわかっているけど挫折してしまうから」だろう。
更に、(小説を読んでいるとは思えないほど頭を使いながら)序盤をクリアしても、真ん中あたりでまた辛くなる。前述した「もはや政治学の専門書」の部分とか。
だが、最後まで読む価値はあると思うので、一度読み始めたら是非最後まで読んでみてほしい。長いとはいえ、隙間時間を見つけて少しずつ読めば1週間ちょいで読み切れる。なので購入はせず、図書館で借りるのもアリ。
※ただ、この本は一度読んだだけでは完全には理解できない。読むことに必死になってしまい、色々と深く考える余裕がない。なので、買った方が良いと思わないこともない。 読み切れる自信がある人は買っても良いかな…? まあ自己責任でお願いします。結構高いし難しいし話自体も「途轍もなく面白い!」というわけではない。だが世界最高級の小説であることは間違いない。
理想はブックオフかな。うん。人気作だから滅多に置いてないけど。そういや池袋のブックオフには1冊だけあったな。
余談
以前、Amazonが販売している電子書籍Kindleで、読者の書棚から一冊の本が消えたことがあった。本が消されてしまう。まるでこの本に見られるような光景である。面白いのは、この時消された本が、他ならぬ「1984年」だったこと。(ただのAmazonのミスらしい)
余談2
映画好きなら、この本を読んでいて「未来世紀ブラジルそっくりやん」と思うだろう。
もちろん先に発売されたのはこの本。30年近く先かな。「未来世紀ブラジル」はこの本の映画化作品だという説が有力。実際、監督のテリー・ギリアム自身も、この本から着想を得ていると認めている。
この本にあるいくつかの非現実的な部分を少し現実的にしたような、そして、強烈かつ独特のセンスを醸し出す映像で描いた、そんな映画が「未来世紀ブラジル」という印象。
あくまでも「着想を得た」レベルなので、被っているところはさほどない。全体を見たときに「似てるなー」と思う程度。片方を既に知っていても、もう片方を普通に楽しめるのでご安心を。
どちらを先に味わうかは、ご自由に。
If you kept the small rules, you could break the big ones.
小さなルールを守っていれば、大きなルールを破ることができる。
ジョージ・オーウェル (イギリスの作家)