若いセンターバックはなぜ凄いのか。
最近、日本代表には若いセンターバックが2人呼ばれた。三浦弦太(23)と冨安健洋(20)だ。アジアカップのメンバーにも(少なくともどちらかは)入るだろう。
ところで、この2人、特に冨安はサッカー中継では必ず何度もピックアップされるが、なぜそこまで評価されるのかわからない人も多いのではないだろうか。
20歳でベルギーでプレーしていて日本代表にも選ばれ始めている。でも点を取っているわけでもないし、イマイチすごさがわからない… と。
冨安の何が凄いのかはこれまでツイッターで散々書いてきたので、最後の方に簡単に書く。
実は彼が評価されている背景には、センターバック(守備の中心)というポジションの特性がある。
まず第一に、評価方法が違う。
大迫や中島ら攻撃選手の評価は、基本的に加点方式だ。ゴールやアシストが多ければ、他はどんなに体たらくでも評価してもらえる。結局、点さえ取れば何とかなると言っても過言ではない。
一方で守備選手は、減点方式で評価される。
もちろん良いプレーをすれば加点されるだろうが、それでも失点をすれば評価が下がる。どんなに良いプレーを見せていても、2〜3失点したら酷評される。ましてやミスをしたとすれば、評価は急落だ。
第二に、連携の重要性が違う。
守備の選手は連携ミスがそのまま命取りになる。攻撃の選手ならば、連携をミスっても「あ〜」で終わるが、守備の選手では「何やってんだ!」「戦犯!」となってしまう。即失点に繋がるので。
第三に、経験がモノをいうから。
試しに、トップクラスのセンターバックを何人か思い浮かべてみてほしい。その中に、20代前半の選手は何人いるだろうか。ほとんどいないのでは? 若いイメージのあるヴァラン、ウムティティ、リュディガーあたりは実はもう25歳だ。他のポジションなら全く若手ではない。
これはなぜかというと、センターバックというポジションは経験がモノを言うからだ。相手の攻撃戦術を見抜く力、ドリブル封じ、パスカット、シュートブロック、ルーズボールのクリア等は、経験を積めば積むほど上手くなる。だから、一流のセンターバックになる頃には若くても25歳にはなってしまうのだ。
さて、この3つの要素を組み合わせるとどのような結論に至るか。↓
監督からすれば、
「守備陣は、1.ミスが少なくて(つまり評価しやすくて)、2.連携も問題なくて、3.経験豊富で安定したベテランを、無難に使いたい」と考えるのだ。
それが最も安全な方法だから。当然だ。
言い方を変えれば、守備陣に関しては、若手の大抜擢と言った"チャレンジ"をしている余裕がない。上にも書いたが、攻撃陣ならチャレンジして失敗しても「点を取れなかったね」で済む。だが、守備陣のメンバー構成で変にチャレンジすると、何失点するかわからない。
そのようなポジションで、冨安は20歳にして日本代表のスタメンを勝ち取っている。
彼の特徴は
・身長(188cm)
・強靭な対人守備力
・高い戦術理解力と判断力(≒サッカーIQ)
・ボランチとしてもプレーできる攻撃センス
・長距離をゴロで通せるパス精度とキック力
と言ったところか。
加えて、彼は普段、異国の地ベルギーで絶対的な戦力としてプレーし続けている。言語による意思疎通に多少の難があるため、センターバックに外国人を使うのは度胸がいる。20歳の日本人をセンターバックで使い続ける所属クラブの監督も見事だが、これは逆に言えば、冨安がそれだけ高く評価され、信頼されていると言うことだ。
そのような選手なので、もしかしたら将来的には世界最高のディフェンダーになるかもしれない。そんな規格外のポテンシャルを持った選手だからこそ、大きく扱われるのだ。
ただ正直、センターバックは他にも良い若手がウジャウジャいるので、冨安にはボランチをやってほしいなーと思わないこともない。